私達日本人の「思考の癖」についての当方の仮説をご紹介します!
今回はロボット掃除機「ルンバ」の企画を例に、白人が発想できて、なぜ日本人ができないかについて取り上げます。
掲題の問いかけの「ルンバ」の部分をインテル社の「マイクロプロセッサ」やアップル社の「iPod」や「iPhone」アマゾン社のクラウドサービス「AWS」に置き換えても通じるはずです。
日本人の創造の得意分野には偏りがある気がする…
日本は、食、伝統美術や工芸、アニメなどの分野で独特の創造性を誇る一方、ある分野ではからっきし創造力を発揮できていないのではないか・・・?
私がそんな疑問を抱いたのは、もう十年以上前のことになります。皆さんもそう感じたことはありませんか?
そして、その背景には一体どんな原因があるのでしょうか?
あなたがもし電機メーカーで「画期的掃除機」を企画するミッションを担当したら…
先ずは関係者でキックオフミーティングやブレストをすることでしょう。
このとき何からネタ出ししますか?
そして、最初に頭に思い浮かぶイメージはなんでしょう?
おそらく、このように掃除機を持って掃除をする人ではないでしょうか?
肝心なのは、この次にどんなことを発想するかです。
「画期的掃除機、画期的掃除機…」
読み進める前に、ぜひあなたもイメージしてみてください!
こんな感じで新しい掃除機のバリエーションを思いつきませんでしたか?(違ったらあなたは普通の人より創造的かも!)
そして、次はこんな感じに・・・
ちょっとふざけすぎたかもしれません(笑)。
しかし、かつて某電機メーカーが出した炊飯器には本当に「誕生日おしらせ機能」がついていたんですよ。
随分とネットではお笑いネタになりました。
脱線しました…話を戻しましょう。
もしあなたが「この流れがどうした?どこがおかしい?」と思ったならば、あなたも日本文化の中で育った普通の日本人だと言えるでしょう。私もそうであったように…
どうやったらロボット掃除機にたどり着くのか?
こうしてズンズン連想を分岐して深く広く膨らまして行って、はたしていかほどの時間を費やせば、ルンバのような掃除ロボットという画期的なアイデアに至れるでしょうか?
少し不安になりませんか?
なんかその前に、「スマホと連携した『ながら電話機能』と、ちょっとバッテリー素材と充電機構にお金をかけて『超速充電機能』を搭載したハンディ掃除機でもやってみるかー!まあまあ画期的やろ?」という誘惑に駆られそうです。
白人的発想をシミュレートして、思考プロセスを比べてみる
そろそろもったいぶるのはやめにしましょう。
ここまでの日本人的発想プロセスと対比しながら、西ヨーロッパに文化起源を持つ白人の思考習慣にならった発想の流れをみてみましょう。
(民族間の歴史的文化背景による思考感覚の違いに対する詳細・考察については、また別の機会に触れたいと思います)
左が日本人、右が白人の場合です。下に行くほど具体的な概念になります。
まず、最初に思いつく直感的イメージは同じであったとします。
次にどうなるでしょう?
さあ、出ました!
日本人は最初の「人が掃除機を持って掃除する」というイメージに素直に従い、感じるままにそれ自体が目的化しました。
一方白人は無意識にでも「なぜ?なんで?」が涌いてきやすい文化です。
「掃除機はなんのためにあるのか?」という、理由・目的を考えはじめました。
めんどくさい人たちですねー。
そして、「楽に家を清潔・快適にするってこっちゃな」と目的を決めました。
その結果、次の発想はどうなるでしょうか?
日本人はさっさとマメに総当たりして想像を膨らませています。
が、白人は目的から手段を、あらためておおざっぱに洗い出しました。
まず最初のイメージの「自分で掃除する」、次に「メイドさんに頼む」・・・
そして、「ロボット!!」と思いつくわけです。
これなら「画期的な掃除機を開発」するという与えられたミッションの目的にも適合しますね。
こうして、私達日本人がアイデアの山に埋もれて疲れてきたころには、白人は、ロボット掃除機の現実的実現方法(実装)の選択肢を絞り込み、あの丸い「ルンバ」が誕生する訳です!
おさらい
上記の例での日本人と白人のアイデア発想時の思考フローの違い(仮説)を一般化すると、下図のようになると思います。
下図はおまけですが、何かアイデアを発想するときだけでなく、何かの問題を分析する際も同じ傾向がみられると、私は考えます。
そして、お気づきになったでしょうか?
アイデア発想でも問題分析でも、日本人の場合は最初に思いついたところより下の枝に突進するので、上位の概念で分岐するその他の可能性には全く意識が向かない可能性が高いのです。この仮説が本当だとすればかなり深刻な問題だとは思いませんか?
日本人の思考は遡らない
以上のように、掃除機の新製品企画の例と一般化で見えることは、「日本人の思考は具体・細分化方向には進むが、最初の着想概念から目的や原因などの抽象方向へは遡らない」という特徴です。
ただしこれは仮説です。実際にこのような流れでルンバの発明が行われた証拠はありません。
そして、たまには日本人だって報告書や論文では形式的な「背景」や「目的」を書きますから、全部が全部遡らないわけではありません。 (白人の徹底した根拠への遡りと比べるとかなり浅いし、必然性が弱いと思いますが)
ただ、この仮説は傾向としては不気味なほど日本の社会現象、とりわけ企業・政治の迷走や不祥事、労働問題、集団の意見や方針がまとまらないなどの諸問題の根本要因に据えると、その説明の通りが良いのです。
例えば、福島第1原発事故のお粗末すぎる事前対策と事後対応などを見れば、概念の枝を広く探ることができないゆえに、リスクが安易に想定外になり、対処もお粗末になったと捉えることができないでしょうか?
一方で、日本人の繊細さ、感性の鋭さ、手先の器用さも狭い範囲の具体方向に集中する性質のおかげだと考えると腑に落ちます。
冒頭にあげた疑問の「食や芸術分野に強い」のも、目先の具体物の精緻を極める強さ故です。逆に苦手な「ある分野」とは、広範囲に分布していたり、直接触れられない概念などの対象ということになります。
手段の汎用化応用やアップル的なサービスや、ブランドイメージ・ユーザ体験のコンセプトの練り上げがそれにあたります。
つまり、日本人の長所も短所もこの思考・感覚の特性の表裏というわけですね。
なお、抽象方向に思考が働きにくいのは動物の本能なので、人類の殆どは程度の差はあれ同じ傾向があります。ただ歴史的に、地政学的に日本人はこの中で特にこの傾向が強いと私は考えています。
さて…まだ眉唾だなあと納得いかない方も多いでしょう。
ですので、次回はルンバのような仮定の話ではなく、ちゃんと資料があって当事者証言つきの事例をご紹介しましょう。
世界発の汎用マイクロプロセッサのアイデアに肉薄しながらも、世界のインテルになりそこねた日本企業ビジコン社の例です。
お楽しみに!
追伸:この日本人の思考の悪い癖を抑えて、マメで熱心な長所を生かす方法として、きこりソフトでは「TreeViews」というアプリを開発しました。
よろしければ、基本機能は無料でお使いいただけますので、このアプリでの論理思考のメリットについても製品ページにてご覧頂ければ幸いです。